2022年10月5日 礼拝説教 「生まれ故郷を出なさい」
2022年10月5日 礼拝説教
「生まれ故郷を出なさい」
創世記12章1節~7節
1節
主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷、父の家を離れてわたしが示す地に行きなさい。
2節
わたしはあなたを大いなる国民にし、あなたを祝福し、あなたの名を高める、祝福の源となるように。
3節
あなたを祝福する人をわたしは祝福し、あなたを呪う者をわたしは呪う。地上の氏族はすべてあなたによって祝福に入る。」
4節
アブラムは、主の言葉に従って旅立った・・・とき、七十五歳であった。
5節
アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え・・・カナン地方に入った。
6節
・・・当時、その地方にはカナン人が住んでいた。
7節
主はアブラムに現れて言われた。「あなたの子孫にこの土地を与える。」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。
英語には「カンフォート・ゾーン」という言葉あります。「カンフォート」は居心地良さ、「カンフォート・ゾーン」は居心地良いと感じる場所のことです。ほとんどの人は「カンフォート・ゾーン」から出ようとしません。とどまるとほぼ予想通りに物事が進み、いつも通りにしていればまず間違いありません。出ると不安な気持ちに襲われ、面倒なことが多く、失敗する可能性があります。家族や仲間のほとんどは「カンフォート・ゾーン」にとどまるようにアドバイスします。その意見はまともで賢く、納得しやすいものです。
アブラハム、モーセ、ダビデは旧約聖書の三大人物です。アブラハムはすべてのユダヤ人の先祖。モーセは奴隷になったユダヤ人の解放者。ダビデはユダヤ人が理想とする偉大な王様でした。ユダヤ民族の物語はアブラハムの話から始まりますが、この人の最初の名前はアブラムでした。アブラムは古代四大文明の一つ、シュメール人の社会で生まれ育ち、ウルという街で恵まれた生活をしていました。とても居心地の良い環境にいたので、正に「カンフォート・ゾーン」にいました。この場所を出る理由は特になく、残れば安定した生活の保障がありました。
ユダヤ人の歴史はアブラムという人が神様と出会い、常識では考えられない指示を受けるところから始まります。しかし、アブラムはこの指示に従い、実家がある生まれ故郷と別れを告げて都会の生活を離れ、遊牧民になって知らない国に向かって出かけます。このようにすれば大きな幸せがあるという約束を神様から受けます。しかし、それはアブラム本人が受ける幸せというより、アブラムの子孫が受ける幸せであり、世界のすべての人たちが受ける幸せでした。アブラム本人が受けたのは、多くの子孫と、世界中の人たちから尊敬されることと、アブラムの幸せを願う人が幸せになり、不幸を願う人は不幸になるという約束でした。
土地を持たない遊牧民になり、不便な生活を始めることに何の得があるかと反対されたことでしょう。しかし、神様の指示に従った結果、アブラムはユダヤ教徒だけではなく、キリスト教徒とイスラム教徒からも尊敬される人物になり、世界の人口の半分以上に当たる人たちの信仰の土台を据える人になりました。もし、アブラムが神様の指示を無視してウルの街に残ったとしたらどうなったでしょうか。もしかしたら、世界の歴史そのものが違ったものになったかもしれません。
生徒の皆様にも、私たち教員にも、アブラムと同じように「カンフォート・ゾーン」という、居心地の良い場所があります。生徒にとってそれはいつもの仲間だったり、自分の部屋だったり、保健室かもしれません。教員にとってそれは昔から使い慣れた教材だったり、指導方法だったりします。そこから出ない限り、気持ちが楽で、悩む必要はありません。
問題はただ一つで、そこに成長がないということです。そんな私たちの背中を押すように神様は語り掛けています。「この場所出て、私が示す新しいことに挑戦してみなさい。誰が何と言っても、あなたに隠された能力があり、いくらでも成長する可能性を秘めています。勇気を持って出るあなたの成功を保証するのは私です。自分の世界に閉じこもることなく、 世界に出て行って羽ばたきなさい。」
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