2024年3月7日 中学校卒業式 「わたしが示す地に行きなさい」
2024年3月7日 中学校卒業式
聖書箇所 創世記12章1~4節
1節 「主はアブラムに言われた。『あなたは生まれ故郷、父の家を離
れてわたしが示す地に行きなさい。
2節 わたしはあなたを大いなる国民にし、あなたを祝福し、あなた
の名を高める、祝福の源となるように。
3節 あなたを祝福する人をわたしは祝福し、あなたを呪う者を
わたしは呪う。地上の氏族はすべてあなたによって祝福に入
る。』
4節 アブラムは、主の言葉に従って旅立った。」
今から三年前、東奥義塾から皆様に一枚の招待状が届きました。開けて見たら次の様に書いてありました。「私たちはこれから、今までに体験したことのない冒険に出かけます。予想もできない危険が待っています。ゴールにたどり着く保証もありません。しかし、付いて来るなら、地元の中学校で体験できない世界をお見せします。国内の進学先にも、海外の進学先にも通じる道のお伴をします。夢がある生徒。勇気ある生徒。平凡に満足できない生徒はどうぞ、私たちの仲間に加わってください。誰も踏み込んだことのない場所に入り、自分たちの手にしか入らない宝を獲得しましょう。」
私たちも不安でした。このような誘いに誰が応じてくれるでしょうか。しかし、奇跡が起きました。ここにいる四十一名の生徒とそのご家族は私たちに信頼を寄せ、再興した東奥義塾中学校の一回生としてスタートラインに立ってくれました。その光景を見て、私たちは感動したのはもちろんのこと、ひどく緊張し、身が引き締まりました。その時のことを思い出しながら、ここにいる皆様に改めて感謝を申し上げます。
その結果はどうだったでしょうか。皆様の多くは中学生には困難と言われる、高度な英語の資格を取得し、海外に出かけて外国の家族と滞在し、英語だけで過ごす生活を体験しました。これまでは、自分にあるとも気が付かなかった力を発見し、同じような夢を持つ友と切磋琢磨しながら、伸び伸びと成長してくれました。
一年生の時、皆様に「カンフォート・ゾーン」という言葉を紹介しました。「カンフォート」は心地良さ、「カンフォート・ゾーン」は居心地の良い場所を指します。ほとんどの人は「カンフォート・ゾーン」から出ようとしません。とどまるとこれまでの仲間と一緒に過ごせる上に、物事はほぼ予想通りに進みます。その場所を離れることに面倒なことが多く、失敗したらどうしようという不安もあります。家族や仲間のほとんどは「カンフォート・ゾーン」にとどまるようにアドバイスします。その意見はまともで賢く、納得の行く物です。
問題はただ一つ。そこには際立った成長はなく、想定内の成果しか望めないことです。神様はそんな私たちの背中を押して語り掛けます。「誰が何と言っても、あなたに隠された能力があり、いくらでも成長する可能性を秘めています。この場所を出て、私が示す新しいことに挑戦してみなさい。勇気を持って出るあなたの成功を保証するのは私です。自分の世界に閉じこもることなく、世界に出て行って羽ばたきなさい。」
先ほど、岩住宗教主事に読んでいただいた聖書の箇所は、2年半前に皆様と一緒に学んだアブラハム物語の第一幕のセリフです。最初はアブラムと名乗っていたアブラハムは、古代文明の中心地、メソポタミア地方のウルに住んでいました。当時の世界としては生活レベルの一番高い街で、治安は良く、食料も豊富でした。住民を楽しませる娯楽も多く、教養がある人との交流もありました。周辺にいる田舎育ちの若者は皆、この街に憧れ、何とかしてここに住みたいと願っていました。一旦、住み着いたら、誰も出ようとは思いませんでした。アブラハムにとっても、この場所こそ「カンフォート・ゾーン」その物でした。
「あなたは生まれ故郷、父の家を離れてわたしが示す地に行きなさい。」ユダヤ人の歴史はアブラハムという人が神様と出会い、常識では考えられない指示を受けるところから始まります。「住み慣れた場所を離れるなら、あなたばかりではなく、世界のすべての人も幸せになる。」「どこへ行くのですか?」「まずは出かけなさい。目的地は着いてからそこだと知らせてあげよう。」このような不確かな話に、誰がついて行けるでしょうか。後に信仰の父と呼ばれることになるアブラハムはこの指示に従い、実家がある生まれ故郷に別れを告げました。安定した都会の生活から離れ、遊牧民になり、知らない地に向かって出かけました。
冒険に誘う神様の指示に従ったアブラハムと重なって見えるのは、今日、ここで東奥義塾中学校を卒業して行く、この上もなく大事な皆様です。ここで一区切り付きますが、皆様はまだ道半ばにあり、お一人お一人の挑戦はむしろ、これからが本番です。この数年の世界情勢を見る限り、戦後80年続いた世の中の常識が覆りそうな、転換期を迎えているのは確実だと思います。卒業する皆様が備えなければならないのは、困難な道というよりは、道なき道にと言った方が正確でしょう。
しかし、私は心配していません。大人たちにも正解がわからない難問を解き、次の時代の先頭に立って邁進するのは、ここにいる皆様だと確信しています。今は答えが分からなくても、手がかりは既に掴んでいます。本物とまやかしの区別が付いているので、うまい話しには騙されません。根底にある真実が分かったので、情報の嵐に惑わされません。はるか彼方にあるゴールが見えているので、無駄なことに気を取られる心配もありません。
卒業生の皆様。ご卒業、おめでとうございます。私たちにとっても、皆様と過ごせたこの三年間は幸せな時でした。日々、成長して行く姿を見ながら、私たちの夢も膨らみました。将来への可能性を、これほど明確に示してくれた生徒との出会いは、今までにあったでしょうか。決してここに踏みとどまらないでください。「これ」と確信した道を発見したら、躊躇することなく突き進み、やめさせようとする声には耳を貸さないでください。東奥義塾中学校の卒業生に相応しい存在として羽ばたき、より良い世界を作る活躍をしてください。
保護者の皆様。ご子息、ご息女のご卒業、おめでとうございます。小学校を出たばかりのお子様を、私たちの手に託してくださった時の重い決断は決して忘れません。今は立派に成長し、高等学校に進む時を迎えました。保護者様の夢と期待を背負いながら、三年後にやって来る次の卒業に向かい、力強い歩みを続けるものと固く信じています。
ご来賓の皆様。再興した東奥義塾中学校の第一回目の卒業式にご列席いただき、まことにありがとうございます。普段から我が校の中学生を深く心に留め、教職員である私たちをご指導いただき、今日、卒業するお一人おひとりをこの三年間、励まし、支え、暖かく見守ってくださったことを、心から感謝申し上げます。今後も、卒業する生徒の後輩たちにも、特別な目を注いでくださるよう、心からお願い申し上げます。
今日ここに集まり、ここから出て行く尊いお一人おひとりの上に、神様の豊かな祝福があることを祈り、式辞といたします。
2025年3月7日
東奥義塾中学校
塾長 コルドウェル
ジョン
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