2024年3月7日 礼拝説教 「山頂まで行って来た」

 202437日 礼拝説教

「山頂まで行って来た」

申命記341節~12

1節           モーセはモアブの平野からネボ山、すなわちエリコの向かいにあるピスガの山頂に登った。主はモーセに、すべての土地が見渡せるようにされた。ギレアドからダンまで、

2節           ナフタリの全土、エフライムとマナセの領土、西の海に至るユダの全土、

3節           ネゲブおよびなつめやしの茂る町エリコの谷からツォアルまでである。

4節           主はモーセに言われた。「これがあなたの子孫に与えるとわたしがアブラハム、イサク、ヤコブに誓った土地である。わたしはあなたがそれを自分の目で見るようにした。あなたはしかし、そこに渡って行くことはできない。」

5節           主の僕モーセは、主の命令によってモアブの地で死んだ。

6節           主は、モーセをベト・ペオルの近くのモアブの地にある谷に葬られたが、今日に至るまで、だれも彼が葬られた場所を知らない。

7節           モーセは死んだとき百二十歳であったが、目はかすまず、活力もうせてはいなかった。

8節           イスラエルの人々はモアブの平野で三十日の間、モーセを悼んで泣き、モーセのために喪に服して、その期間は終わった。

9節           ヌンの子ヨシュアは知恵の霊に満ちていた。モーセが彼の上に手を置いたからである。イスラエルの人々は彼に聞き従い、主がモーセに命じられたとおり行った。

10節       イスラエルには、再びモーセのような預言者は現れなかった。主が顔と顔を合わせて彼を選び出されたのは、

11節       彼をエジプトの国に遣わして、ファラオとそのすべての家臣および全土に対してあらゆるしるしと奇跡を行わせるためであり、

12節       また、モーセが全イスラエルの目の前で、あらゆる力ある業とあらゆる大いなる恐るべき出来事を示すためであった。

公民権運動の活動家、キング牧師の“I Have a Dream”「私に夢がある」という題名のスピーチはとても有名です。「私に夢がある。いつか、人は肌の色ではなく、人格の強さで評価される時が来る。」この言葉は聞いたことがあると思います。しかし、“I’ve Been to the Mountaintop”「私は山頂まで行って来た。」はどうでしょうか。これもキング牧師の有名なスピーチで、暗殺された196844日の前の日の夜に行った物です。差別的な扱いを受けていた黒人労働者の抗議活動に参加するためにテネシー州のメンフィスにやって来ました。暗殺予告も続いていたので、「山頂まで行って来た」という言葉の中に、自分とモーセを重ね、死が間近だと感じていたキング牧師の思いが込められていました。

39歳の若さで、公の場所で語った最後の言葉は次の通りです。「これからどうなるかはわかりません。困難な日々が待っているのは分かっています。しかし、今の私に、それはどうでも良いことです。何故なら私は山頂まで行って来たからです。皆と同じように、私も長生きしたいです。長寿も大事なことです。しかし、今はそのことを気にしていません。ただ神様のみ心を行いたいだけです。神様は私を山の上まで登らせてくださいました。私ははるか遠くまで見てきました。約束の地を見てきました。皆と一緒に行けないかもしれません。しかし、今夜、知って欲しいのは、一つの民族として私たちは必ず、約束の地まで行けるということです。そして、今夜の私は幸せです。何も心配していません。誰をも恐れていません。私の目は主の栄光が来るのを見たからです。」

次の日、ホテルのバルコニーに立っていたキング牧師は、白人が長距離から打って来た銃弾に倒れ、帰らぬ人となりました。キング牧師は勇敢に戦いましたが、徹底的に暴力を否定し、殴られても殴り返さない人でした。しかし、彼の死を知ると多くの黒人の若者が反発し、アメリカ各地で暴動が起きました。キング牧師の夢が死んだかに見えました。人の中身と何の関係もないはずなのは顔の形や肌の色です。今では当たり前に思われていることですが、当時のアメリカ社会の大部分はその事実を認めようとしませんでした。

キング牧師は黒人に対する差別が消えるのを見ることができませんでした。差別的な白人の多くは、彼の死の知らせを聞いて喜びました。しかし、約束の地に入れなかったモーセが、山の上からその全域を見ることができた様に、人種差別が消えて行くアメリカを心の目で、遠くから眺めることできました。暗殺されてから四十年がたち、選挙権も否定され、白人と一緒に公共施設も使えなかったアメリカで、考えられないことが起きました。バラク・オバマという黒人は大統領に選ばれました。殺された時に消えたはずのキング牧師の夢は実現しました。

もちろん、アメリカ社会の人種問題がそれで、すべて消えた訳ではありません。しかし、黒人の子供が白人の子供と同じ学校で学ぶこともできなかった時代に比べるなら、全く違う社会が生まれたのは間違いありません。夢は力強い物です。「死んでも生きる」というのは正にこのようなことで、決して諦めてはいけないという事実を教えてくれます。高校生はこれから、今年度で最後の定期テストがあります。それが終わると終業礼拝がありますが、その時にこの話を続けます。中学生は来週の月曜日になります。

Comments

Popular posts from this blog

2019年3月8日 終業礼拝 「心のメンテナンス」

2024年2月26日 礼拝説教 「同行してくださる神」

2023年7月10日 礼拝説教 「人の心を固くする神」