2024年1月9日 礼拝説教 「嘘で人を滅ぼすな」

20241月9日 礼拝説教

「嘘で人を滅ぼすな」

出エジプト記201節、16

1節              神はこれらすべての言葉を告げられた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

16  (九番)隣人に関して偽証してはならない。

「嘘は泥棒の始まり」という諺がありますが、偽証はただの嘘ではありません。裁判所や議会に証人として呼ばれ、「良心に従って真実を述べ,何事も隠さず,偽りを述べないことを誓います」と宣言した後に嘘の証言をすると偽証罪になり、刑法169条に基づいて裁かれます。ただ、偽証罪で裁かれたというニュースはあまり聞かないし、実際はかなり稀なことです。偽証の疑いをかけられても「記憶違いだった」などと、言い逃れできることが多いからです。

しかし、出エジプト記を読み進むと、この九番目の掟に裁判での証言より広い意味があったことがわかります。23章の初めに、根拠のないうわさを流したり、事実ではないと知りながら数が多い方についたり、可哀そうだと思って弱い者にえこひいきするのも、あってはならないと書いています。ここまで話を広げると、ほとんどの人に、何らかの心当たりはあると思います。

前回の礼拝で、六番目から八番目の掟を読み、人の命も、結婚相手も、持ち物をも奪うのが罪だという話をしました。この事について十分に納得していただけたと思いますが、今日の話には、もう少し微妙な内容が含まれています。九番目の掟は、かつてあったような、噂が激しく飛び交う村社会には大事な戒めでしたが、誰もがSNSを使う現代社会にも、注目すべき掟です。

暴力を受けたり、持ち物を奪われたりするのはとても辛いことですが、受けた被害が誰から見てもわかることなので、対処の仕様があります。一番やっかいなのは、嘘や、嘘でなくても、事実を少し曲げた話で評判を傷つけられたり、信用を失ったりすることです。人は皆死ぬので、いずれは命や持ち物を失います。失い方にもよりますが、それが名誉なことになることもあります。しかし、どう対処したら良いのか分からなくなるのは、評判を傷つけたり、信用を失わせたりする、言葉の被害を受け時です。

「身体に傷を受ける訳でもなく、財産を失う訳でもないので、気にするな。時がたてば皆が忘れる。いずれは真実が明らかになる。」そう思わないとやって行けない場合もあるし、周囲の人たちから、そのように励まされることもあります。しかし、弁解する機会もないまま、言われ続ける本人の苦しみに言い尽くせない物があり、死んだ後も悪い評判が続くのも、珍しいことではありません。人間は孤独のまま生きていられない存在です。人の評判を破壊したり、信用に傷をつけたりすることは、殺すことより恐ろしい結果につながることがあります。

デジタル発信の時代に生きる私たちは特に気を付けなければなりません。一人の相手に送ったつもりの噂話が、アッという間に大勢の人に転送されることもあり、ネットにまで上がることがあります。何気なく送ったメッセージが、正しく解釈されるとは限りません。「いいね!」をクリックしただけで、その意見に全面的に賛成だというメッセージを世界に広めることになります。

自分の経験から学んだのは次のことです。「否定的なことを率直に言う必要がある時は、面と向かって言うべき。ネガティヴな思いをデジタルで発信するのは危険過ぎる。」情報を伝え合ったり、友だちの輪を広げたりするにはとても便利なツールなので、SNSを使うなとは言いません。しかし、発信する時に、受け取る相手が明るく、嬉しい気持ちになるかを考える必要があります。近況報告や事務的な連絡以外は、「ありがとう」と言って感謝する。「すごいね!」と言って褒める。「がんばってね!」と言って励ます。そのようなメッセージだけを送る決心をして、新しい一年を始めるようにしましょう。

三学期はこれからだと思っても、学年の終わりは間近です。卒業、または進級の前にしようと思うことがあれば、できるのは今です。高校三年生は進路が決まっていても、決まっていなくても、気持ちが自然と四月以降の生活に移る時期を迎えていると思いますが、思い残すことがないように、東奥義塾での最後の一時に全力を尽くしてください。大学入学共通テストの受験者は、三年間努力して目指して来たその日まで、後五日しかありません。身体と心が支えられ、最高の状態で迎えられることを祈ります。

これまでは暖冬が続いていますが、寒さも雪も厳しくなるのはこれからです。雪国に育った者らしく、逞しい気持ちを失うことなく、力強く乗り切るようにしてください。お一人お一人の2024年の上に、神様からの祝福が豊かにあることを祈ります。 

Comments

Popular posts from this blog

2019年3月8日 終業礼拝 「心のメンテナンス」

2024年2月26日 礼拝説教 「同行してくださる神」

2023年7月10日 礼拝説教 「人の心を固くする神」