2020年7月13日 礼拝説教 「差別を打ち破るもの」


2020713日 礼拝説教
「差別を打ち破るもの」

ルカによる福音書171119

11節             イエスはエルサレムへ上る途中、サマリアとガリラヤの間を通られた。
12節             ある村に入ると、重い皮膚病を患っている十人の人が出迎え、遠くの方に立ち止まったまま、
13節             声を張り上げて、「イエスさま、先生、どうか、わたしたちを憐れんでください」と言った。
14節             イエスは重い皮膚病を患っている人たちを見て、「祭司たちのところに行って、体を見せなさい」と言われた。彼らは、そこへ行く途中で清くされた。
15節             その中の一人は、自分がいやされたのを知って、大声で神を賛美しながら戻って来た。
16節             そして、イエスの足もとにひれ伏して感謝した。この人はサマリア人だった。 
17節             そこで、イエスは言われた。「清くされたのは十人ではなかったか。ほかの九人はどこにいるのか。
18節             この外国人のほかに、神を賛美するために戻って来た者はいないのか。」
19節             それから、イエスはその人に言われた。「立ち上がって、行きなさい。あなたの信仰があなたを救った。」

人は皆違います。肌の色、生まれた国、話す言葉、信じている宗教等を基準に組分けしても、それぞれの集団の中に幅広い多様性があります。特定の集団に多いと思われる特徴を、構成メンバー全員に当てはめると、大変な問題が生じます。人種差別もそうですが、差別はすべて、人を特定の集団の一員として見て、個人として見ようとしないところから始まります。

具体的に言うと、知能指数の平均値が高い人種の一員だからといって、頭が良いとは限りません。倫理的に評判が高い国の教育を受けても、犯罪に手を染める人がいます。運動能力に長けているというイメージがある民族に生まれても、スポーツが不得意な人たちがたくさんいます。人は社会から押し付けられたラベルとは無関係に、個人として持つ能力や人格を基準に評価してもらえないと、決して世の中が公平とは言えません。

アメリカのミネソタ州に起きた警察官による黒人の殺害は改めて、この問題を浮き彫りにしました。世界各地で「肌の色で人を犯罪者だと決めつけるな。」と叫ばれています。先祖の業績がいくら立派でも、自分のものだと勘違いすることの愚かさが指摘されています。心が通じ合う世界を作る努力をやめ、自国の利益ばかり主張する指導者たちのいがみ合う姿にうんざりする思いが高まっています。

どの国にも昔から、些細な違いを根拠に相手を蔑み、自分の方が偉いと思いたがる人たちがいました。しかし、今はネットが拍車をかけ、SNSを開くと、目を覆いたくなるほど、憎しみのこもったメッセージが飛び交っています。善良な地球市民として生きようとするお一人お一人に言いたいです。「このような、偏見に満ちた考えに振り回されないでください。」

新約聖書時代のイスラエルも例外ではなく、激しい差別意識がありました。イエス様も、同国民のユダヤ人なら感謝する心を持ち、礼儀正しい振る舞いをするはずだと期待していました。期待に応えたのは見下されて相手にされないサマリア人だったことを不思議に思いました。しかし、何故この十人の病人の中に一人のサマリア人がいたのでしょうか。そもそも、ハンセン病に代表される、「重い皮膚病」を患うこの人たちは、人種とは無関係にひどい差別を受けていました。イエス様に近づこうとしないで、遠く離れた所から声を張り上げていたのは、健康な人に近づくことを禁止する厳しい掟があったからです。

差別を受けた者同士が味わう仲間意識が人種差別に勝ったのでしょうか。同国民から追い出されたこのサマリア人は、何故か同じ病を持つユダヤ人の仲間に入れてもらいました。同病のユダヤ人と一緒に物乞いをしながら命をつなげ、本来、いてはならない場所で特別な恩恵を受けているという意識が心を変えたのでしょうか。イエス様の言葉が持つ不思議な力に触れると、他の誰よりも素直に、恵まれた自分の立場に感謝する気持ちが心から湧き出たのはこのサマリア人でした。

イエス様が生きている間、外国人を弟子にすることはありませんでした。しかし、よそ者の立派な態度に感心するイエス様の言葉は、弟子たちの記憶に残りました。このいきさつを目撃した彼らは数年後、越えられないと思われていた人種、性別や身分の壁を破り、差別意識を排除した共同体を作りました。信じて素直に感謝するこのサマリア人の行動は、彼らの心を縛る、固い偏見の束縛を解くことに貢献したのかもしれません。

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