2018年7月18日 礼拝説教 「小さな子供が一番偉い」

2018718日礼拝説教
「小さな子供が一番偉い」

ルカによる福音書943b節~48

43節             イエスがなさったすべてのことに、皆が驚いていると、イエスは弟子たちに言われた。
44節             「この言葉をよく耳に入れておきなさい。人の子は人々の手に引き渡されようとしている。」
45節             弟子たちはその言葉が分からなかった。彼らには理解できないように隠されていたのである。彼らは、怖くてその言葉について尋ねられなかった。
46節             弟子たちの間で、自分たちのうちだれがいちばん偉いかという議論が起きた。
47節             イエスは彼らの心の内を見抜き、一人の子供の手を取り、御自分のそばに立たせて、 
48節             言われた。「わたしの名のためにこの子供を受け入れる者は、わたしを受け入れるのである。わたしを受け入れる者は、わたしをお遣わしになった方を受け入れるのである。あなたがた皆の中で最も小さい者こそ、最も偉い者である。」

「先輩」という言葉を聞くと、どのようなイメージが浮かんできますか。強くて何でもできるが、後輩たちの面倒見が良く、大事に育ててくれるような人でしょうか。それとも、自己中心で、後輩をいじめ、都合良く使い走りにするような人でしょうか。

昔の部活動の一年生は大変だったというイメージがあります。山岳部、特に大学の山岳部の一年生は例に漏れず、出かける前に一番古い装備を渡され、登ると一番重い荷物を背負わされ、目的地に着くと休む暇もなく飯炊きをさせられ、夜になるとテントの最も落ち着かない場所に寝かされるというイメージがありました。以前、山で大学の山岳部の学生と出会うこともありましたが、先輩が軽いリュックを背負いながら、常識では考えられない、特大の荷物を一年生に背負わせて「ガンバ!」とカツを入れる姿を見て「バカなあ」と思うことがありました。

時代が進むに従って、このような事をすると、新入部員が逃げてしまうので、上下関係の悪用が徐々に消えて行きましたが、新米顧問として東奥義塾の山岳部に入った頃、山のことを教えてくれた先輩顧問が生徒たちに話した言葉が今も記憶に残っています。「一年生は山歩きに慣れていないから、先輩たちに荷物を軽くしてもらいなさい。二年生になるまで、自分の荷物を背負えるように体力をつけなさい。三年生は後輩たちの荷物を持ってあげられるようにしなさい。」先輩、後輩のトラブルがなかったとは言えませんが、自分たちに代わって重い荷物を背負う先輩たちの姿を見て、本当のリーダーの在り方を学んだ部員が多かったと思います。

イエス様は弟子たちの間でだれが一番で、だれが二番かを決めようとしませんでした。勝手に序列を決めようとする弟子たちの動きに気付いたイエス様は不快感をあらわにして「あなたがた皆の中で最も小さい者こそ、最も偉い者である。」と言いました。

弟子たちは、イエス様がイスラエルの国を治めるようになるメシアだと確信していました。早くからそのようなお方の弟子になった自分たちが幸せだと思い、気持ちが早まって、新しい国家のなかで、イエス様の次に偉くなるのはだれなのかを気にしていました。

イエス様の話を注意深く聞いていたら、このような議論が起きるはずがなかったです。世間のイエス様への期待がますます高まって行く中、浮かれ気味になっている弟子たちにイエス様は繰り返し言いました。「この言葉をよく耳に入れておきなさい。人の子は人々の手に引き渡されようとしている。」近い内に起きようとしていたのは、イエス様の就任式ではなく、イエス様の逮捕、裁判と処刑でした。

イエス様が築こうとしている「神の国」は、創設者であるイエス様が権力者たちに殺されるところから始まるものでした。世の中の常識から言うと、イエス様が唱える「神の国」は正に消えようとしていました。しかし、そのような常識をはるかに超えた、これまでのものとは全く違う、新しい国が生まれようとしていました。

その新しい国の上下関係はそれまでと違いました。偉くなろうとするなら、人の上に立とうとするのではなく、最も小さな者、誰よりも低い立場にいる者、人に仕える者になる必要がありました。

先週、青山学院の院長が弘前に来ました。弘前教会でお話しを聞くことができましたが、「私たちが育てようとしているのはサーバント・リーダーです。」という言葉が印象的でした。僕の心を持つ指導者。最も小さな者になって、より良い世界をつくる人。イエス様が弟子たちに求めていたのは、そのような人になることではなかったでしょうか。

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