2018年5月2日 礼拝説教 「イエスの服の裾に触れる」
2018年5月2日礼拝説教
「イエスの服の裾に触れる」
ルカによる福音書8章40節~48節
41節
そこへ、ヤイロという人が来た。この人は会堂長であった。彼はイエスの足もとにひれ伏して、自分の家に来てくださるようにと願った。
42節
十二歳ぐらいの一人娘がいたが、死にかけていたのである。イエスがそこに行かれる途中、群衆が周りに押し寄せて来た。
43節
ときに、十二年このかた出血が止まらず、医者に全財産を使い果たしたが、だれからも治してもらえない女がいた。
44節
この女が近寄って来て、後ろからイエスの服の房に触れると、直ちに出血が止まった。
45節
イエスは、「わたしに触れたのはだれか」と言われた。人々は皆、自分ではないと答えたので、ペトロが、「先生、群衆があなたを取り巻いて、押し合っているのです」と言った。
46節
しかし、イエスは、「だれかがわたしに触れた。わたしから力が出て行ったのを感じたのだ」と言われた。
47節
女は隠しきれないと知って、震えながら進み出てひれ伏し、触れた理由とたちまちいやされた次第とを皆の前で話した。
48節
イエスは言われた。「娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。」
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ガリラヤ湖の向こう側でゲラサ人に追い出されたイエス様の一行は、地元に戻ると大歓迎を受けました。助けを求めている人たちが大勢いたからです。特に、死を迎えようとしていた十二歳の娘がいる、ヤイロという会堂長は必死でした。
会堂長という身分から分かるように、町の中心的な人物で、とても立派な人だと思われていました。遠慮することなく、イエス様の足元にひれ伏し、娘を癒しに来るように懇願しました。ヤイロとは対照的にもう一人、隠れるように群衆にまぎれ、こっそりと近づいて来る女性がいました。ヤイロの娘が生まれた十二年前の、その同じ年から始まって、婦人病の一種を患っていたため、本来はこの場所にいてはならない人でした。
中東の一部の地方では今も、生理中の女性を隔離する習慣が残っていますが、当時は旧約聖書のレビ記の箇所を根拠に、出血が止まらない場合は汚れていると見なされ、触れた物もすべて汚れると教えられていました。
あれこれと形を変えながら、ルカによる福音書に登場するのは、このようなタブーや偏見に立ち向かい、苦しめられた少数者や弱者に、胸を張って生きる道を提供するイエス様の姿です。大勢の人に囲まれ、ヤイロの家に向かうイエス様の背後に、この女性が近づいて来ました。
これまで、数多くの医者に診てもらいました。しかし、治療費がかさむだけで、全財産を使い果たし、薬も、食生活の改善も、おまじないのような物も何一つ、効き目がありませんでした。最後に、治療法にではなく、イエス様という人物に希望を託すことにしました。ヤイロのように、皆が見ている前で、イエス様に頼み込むのは恥ずかしくてできませんでした。このような病気をもっている事は知られたくないし、イエス様の反応も心配でした。
「背後から忍び寄り、イエス様の体に触れたらきっと治る。」そう確信したものの、自分の手が触った物がすべて汚れると思うと、そうするわけにも行きませんでした。悩みに悩んだ末、イエス様の衣の裾に、そっと指先だけ、軽く触れることにしました。誰にも気付かれないと思い、責められることもないだろうと思いました。
「だれかがわたしに触った。」イエス様の突然の言葉に弟子たちが戸惑いました。「大勢の人が押し寄せていますよ。それは無理もないでしょう。」しかし、イエス様は譲ろうとせず、後ろを見回しながら言いました。「わたしから力が出て行ったのを感じた。」感電したように、ビリビリッとくる、何かがあったのでしょう。
人の心の深い部分で、何か大事なことが起きると、理屈で説明できない、不思議なことが起きることがあります。何回もあるとは限りませんが、誰にも、長い人生の中で、少なくとも一度や二度はあると思います。
わずかな行為がもたらした、思いもよらない結果にこの女性は怯え、震えながら進み出て、すべてを話しました。話を聞いたイエス様は答えて言いました。「娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。」
一本の指でイエス様の裾に触れる程度のことしかできないのは、今の私たちかもしれません。しかし、信仰はそのような行為から始まり、救いと癒しもそこから始まります。礼拝堂を出る前に、心の中で手を伸ばし、イエス様の衣の裾に触ってみませんか。触って見た皆様にとって、今日はどんな一日になるかが楽しみです。
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