2023年1月16日 礼拝説教 「この町を滅ぼしに来た」
「この町を滅ぼしに来た」
創世記19章1節~13節
1節
二人の御使いが夕方ソドムに着いた・・・ロトは彼らを見ると、立ち上がって迎え、地にひれ伏して、
2節
言った。「皆様方、どうぞ僕の家に立ち寄り、足を洗ってお泊まりください。・・・
3節
・・・彼らはロトの所に立ち寄ることにし、彼の家を訪ねた。・・・
4節
彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、
5節
わめきたてた。「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れて来い。なぶりものにしてやるから。」
6節
ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、
7節
言った。「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。
8節
実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。・・・」
9節
男たちは口々に言った。「そこをどけ。」「こいつは、よそ者のくせに、指図などして。」「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。
10節
二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、・・・
12節
・・・ロトに言った。「・・・あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。
13節
・・・わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのです。・・・」
人類の長い歴史の中で帝国や文明が滅びたことは何度もあります。原因は様々ですが、まずあげられるは戦争です。中国の古典、兵法に書いてある孫氏の言葉は有名です。「戦争は国が生き延びるか、滅びるかの分かれ道なので、それについてよく考える必要があり、一番良い戦法は戦わないで勝つことである。」この頃のマスコミでは、日本が戦争に加わることが前提で話が進んでいるようにも聞こえますが、滅びたくないなら肝心な事は、初めから戦争をしないことです。
次は自然災害です。地震、噴火、津波、干ばつ、伝染病などで大都会が滅びた例はたくさんあります。3,200年前に、不幸が重なった中近東で青銅器文明がわずかな時間ですべて消滅し、形を変えて文明が復活するまで、数百年かかりました。何をすれば良いのかと聞かれても返事に困りますが、日本だけを見ても、皆様が生きている間にもう一度、大きな地震が来る可能性はとても高いと言われています。
しかし、怖いのはそればかりではありません。人間社会が滅びるもう一つの原因は道徳的な腐敗です。賄賂を贈らないと何も進まない国がありますが、ルールも約束事も守れない国はいつまでたっても強くなれません。中国にいた頃、担当していた授業の試験が近づくと、生徒から次の話を聞かされました。「皆、先生の試験のことでビビっている。外国人は賄賂を受け取らないとわかっているからね。」他の先生が皆、賄賂をもらっていたかはわかりませんが、日常生活の中で、汚職の話がよく耳に入ったことだけは確かです。今は独裁者という評判がありますが、就任した頃の習近平主席は汚職を許さない指導者として期待され、人気がありました。
旧約聖書には耳をふさぎたくなるような話がありますが、今日のソドムの話はその最たる物の一つです。ソドムに入った神の使いたちはイケメンだったのでしょうか。とにかく、同性愛の気があるソドムの男たちの目を引きます。ロトの家に詰めかけ、彼らを「なぶりものにする」と言いますが、私が使っている英語の聖書はもっと生々しい表現を使い、彼らの目的が同姓レイプだったことを明らかにしています。
迎え入れた客を恥ずかしい目に合わせると、ロトのメンツは立ちません。しかし、ロトは集まった男たちに信じがたい提案をします。二人いる結婚前の娘を好きの様にさせるから、それで勘弁してくれと訴えます。正しい人だと言われたロトまでこのような事を言うので、女性の人権がどれほど無視されていたかがよくわかります。ソドムの視察に来た神の使いたちは「これまで」と判断を下し、ロトに告げます。「わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのです。」
ユダヤ人から広まった聖書の教えは近代社会の常識になりました。時間がかかりましたが、男女が互いに尊重し合い、協力して良い家庭環境を作り、力を合わせて子供を育て、模範を示しながら、責任感の強い大人として世に送り出すのが当たり前になりました。しかし、アブラハムの時代にこのような道徳はほとんど通用しませんでした。ソドムはその中でも救い様がないほど乱れていた街でした。国を滅ぼすのは戦争や災害だけではありません。ソドムの物語は私たちにも当てはまる、個人の欲望を身勝手に追求することへの警告になっています。
Comments
Post a Comment