2023年1月30日 礼拝説教 「笑いと苦しみ」
「笑いと苦しみ」
創世記21章1節~3節、6節~13節
1節
主は、約束されたとおりサラを顧み、さきに語られたとおりサラのために行われたので、
2節
彼女は身ごもり、年老いたアブラハムとの間に男の子を産んだ。それは、神が約束されていた時期であった。
3節
アブラハムは、サラが産んだ自分の子をイサクと名付け、
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6節
サラは言った。「神はわたしに笑いをお与えになった。聞く者は皆、わたしと笑い(イサク)を共にしてくれるでしょう。」 サラはまた言った。「誰がアブラハムに言いえたでしょう
7節
サラは子に乳を含ませるだろうと。しかしわたしは子を産みました、年老いた夫のために。」
8節
やがて、子供は育って乳離れした。アブラハムはイサクの乳離れの日に盛大な祝宴を開いた。
9節
サラは、エジプトの女ハガルがアブラハムとの間に産んだ子が、イサクをからかっているのを見て、
10節
アブラハムに訴えた。「あの女とあの子を追い出してください。あの女の息子は、わたしの子イサクと同じ跡継ぎとなるべきではありません。」
11節
このことはアブラハムを非常に苦しめた。その子も自分の子であったからである。
12節
神はアブラハムに言われた。「あの子供とあの女のことで苦しまなくてもよい。すべてサラが言うことに聞き従いなさい。あなたの子孫はイサクによって伝えられる。
13節
しかし、あの女の息子も一つの国民の父とする。彼もあなたの子であるからだ。」
生まれたばかりの子供に人を笑わせる力があります。どんなに怖そうな人でも、赤ん坊と向き合うと口元が緩み、優しそうな表情になります。何十年も待った末、やっと子供に恵まれたアブラハムとサラの周囲は笑いに包まれていました。皆があまりにも笑うので、生まれた子供に「笑い」という意味の「イサク」という名前を付けました。
各国に、乳児死亡率が高かった時代から伝わる慣習があります。生まれた時に余り喜ぶと、赤ちゃんが死んだ時のショックが大き過ぎます。日本には、百日無事に育ったことを祝う「お食い初め」がありますが、イサクの場合は、乳離れして普通に食事ができるようになったことを祝って盛大な宴会が開かれました。
アブラハムとサラは何度も、よそ様の乳離れの祝いに招かれました。その都度、自分たちの番が回って来ないことへの悔しさを押し殺して、礼儀正しくお祝いの言葉を贈りました。しかし、この日は違いました。元気に走り回るわが子の姿を眺め、お二人は結婚してからの生活の中で一番幸せな日を迎えました。これほど幸せなら、皆を包み込む広い気持ちなっても良さそうな気がしますが、お祝いムードはわずかしか続きませんでした。
サラにとって、ハガルと、先に生まれたその子のイシュマエルは目障りでした。幸せいっぱいだったはずのサラは良いムードを壊してしまいました。イサクをからかうイシュマエルの姿を見て、抑えきれない恨みが吹き出てしまいました。「あの女とあの子を追い出してください。あの女の息子を、わたしの子イサクと同じにしてはいけません。」幸せな気分に浸っていたアブラハムは、サラの突然の要求を聞いて愕然としました。イシュマエルをも愛していたアブラハムは、寛容な気持ちになれないサラの心の狭さに、ひどく苦しめられました。
聖書は人の姿をとてもリアルに描き、主人公のドロドロした苦悩を隠そうとしません。とても若い頃からこのような苦悩を体験する人がいます。大好きなお父さんと、大好きなお母さんの夫婦仲が悪く、壊れて行く家庭環境を眺めながら、辛い思いをする子供がたくさんいます。過去の恨みを手放そうとすることなく、時間がいくらたっても、仲直りを拒む人は山ほどいます。せっかく出来上がった友好的なムードを壊すのが得意な人もいます。
聖書は、平和をつくる人の幸せを約束していますが、他人と上手く行くのが簡単だとは教えていません。間に入って人の気持ちを繋げようとすると、結果として、どちらからも恨まれることは、よくあることです。一旦、嫌われると、どう説得しても、信頼を取り戻すのは至難の業です。皆に気持ちを分かり合ってもらうのは困難を極めることであり、これ以上のことができないと悟って見切りを付けるしかない時もあります。
アブラハムにとって、サラの気持ちをほぐすのは不可能なことで、イサクとイシュマエルのどちらかを諦めるほかはありませんでした。幸せが新たな苦しみに転じたアブラハムに神様は語りかけました。「これ以上、苦しまなくても良い。正妻のサラと、その子のイサクに自分の責任を淡々と果たしなさい。イシュマエルは私が何とかする。」どうしようもなく複雑で、手のつけ様がない人間関係に苦しむ私たちにも、神様は同じように語りかけます。「手の施しようのないことに心を乱してはいけない。ただ誠実に、その時にふさわしく、するべきことをやり遂げなさい。あとは私が何とかする。私に任せなさい。」
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