2023年1月23日 礼拝説教 「ロトはためらっていた」
「ロトはためらっていた」
創世記19章15節~17節、24節~30節
15節
夜が明けるころ、御使いたちはロトをせきたてて言った。「さあ早く、あなたの妻とここにいる二人の娘を連れて行きなさい。さもないと、この町に下る罰の巻き添えになって滅ぼされてしまう。」
16節
ロトはためらっていた。主は憐れんで、二人の客にロト、妻、二人の娘の手をとらせて町の外へ避難するようにされた。
17節
彼らがロトたちを町外れへ連れ出したとき、主は言われた。「命がけで逃れよ。後ろを振り返ってはいけない。・・・山へ逃げなさい。・・・」
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24節 主はソドムとゴモラの上に天から、主のもとから硫黄の火を降らせ、
25節
これらの町と低地一帯を、町の全住民、地の草木もろとも滅ぼした。
26節
ロトの妻は後ろを振り向いたので、塩の柱になった。
27節
アブラハムは、その朝早く起きて、さきに主と対面した場所へ行き、
28節
ソドムとゴモラ、および低地一帯を見下ろすと、炉の煙のように地面から煙が立ち上っていた。
29節
こうして、ロトの住んでいた低地の町々は滅ぼされたが、神はアブラハムを御心に留め、ロトを破滅のただ中から救い出された。
30節
ロトは・・・山の中の・・・洞穴に二人の娘と住んだ。
伊豆諸島の一番南に、柱の様に海から突き出た不思議な岩があります。高さは100メーターくらいありますが、1788年に発見したイギリス船の乗組員は「ロトの妻」という名前を付けました。後に付いた日本語名は「夫を亡くした女性」という意味の「孀婦岩」でしたが、ソドムの街があったと言われるイスラエルとヨルダンの国境にある死海のほとりにも「ロトの妻」という岩があります。塩分の濃度が海の10倍ほどある死海の横に岩塩の塊がいくつもありますが、その内の一つの、柱の形をした「ロトの妻」の名前は、この聖書の物語に由来します。
ソドムの街の滅亡を知らされたロトとその家族は、神の御使いから避難するように指示されても、ぐずぐずして逃げようとしませんでした。最後までためらったロトの妻は逃げ遅れ、ソドムを襲った災難の犠牲者になりました。ロトはソドムで築き上げた生活のすべてを失い、二人の娘と一緒に山にある洞穴で暮らすことになりました。しかし、この物語から学ぶべき教訓は、災難の時に速やかに避難することでしょうか。近年の自然災害を思い起こすと、そのような解釈ができない訳ではありません。しかし、聖書が伝えようとしているのは、「躊躇することなく、罪と抑圧の生活から離れ、ためらうことなく、神様の救いを受けなさい。」ということです。
今、話題になっているカルトにも、日常的にパワハラが横行するブラック企業にも、虐待的な人間関係にも、一度入ってしまうと抜けられなくなるのが人間の弱さです。人に迷惑をかける集団にいて、その中にいる自分も苦しいと思いながら、人は孤立することを恐れ、収入を失うことを嫌がり、ステータスや立場にしがみつきます。家庭内でDVを受ける人の多くは、耐えられないほどつらい思いをしながら、慣れない世界に飛ぶ込むことよりは、慣れている現状に耐える道を選びます。
そのような集団や仲間は、いずれは滅びます。人を苦しめながら、のさばっている人の正体は遅かれ早かれ明らかになり、時か来ると受けるべき報いを受けます。ためらったロトと、振り返ったその妻は、反面教師として私たちに訴えかけます。神様は警告してくれる御使いまで送り、私たちの手を握り、救い出そうとして言ってくれます。「ここから逃げなさい。後ろを振り向いてはならない。」
今日の聖書物語は、今の自分に当てはまらないと思うかもしれません。信頼できる家族や仲間に囲まれ、幸せに暮らしているから大丈夫だと思うでしょう。しかし、これから何年か先、ソドムから逃げたロトの話が、自分の現実と重なって役に立つ日が来ると思います。今、東奥義塾にいる目的はその時に備え、くじけない、思い切った行動ができる、強い心を育てることです。一番良いのは、初めからソドムに近づかないことです。しかし、万が一、気が付いて見たらソドムに住み着いている自分と出会うことがあったら、急いで逃げるようにしてください。その時に助けを求めて祈るなら、神様の御使いが手を握って連れ出してくれるものと信じています。
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