2022年11月21日 礼拝説教 「サライの女奴隷」

 20221121日 礼拝説教

「サライの女奴隷」

創世記161節~6

1節                アブラムの妻サライには、子供が生まれなかった。彼女には、ハガルというエジプト人の女奴隷がいた。

2節                サライはアブラムに言った。「主はわたしに子供を授けてくださいません。どうぞ、わたしの女奴隷のところに入ってください。わたしは彼女によって、子供を与えられるかもしれません。」アブラムは、サライの願いを聞き入れた。

3節                アブラムの妻サライは、エジプト人の女奴隷ハガルを連れて来て、夫アブラムの側女とした。アブラムがカナン地方に住んでから、十年後のことであった。

4節                アブラムはハガルのところに入り、彼女は身ごもった。ところが、自分が身ごもったのを知ると、彼女は女主人を軽んじた。

5節                サライはアブラムに言った。「わたしが不当な目に遭ったのは、あなたのせいです。女奴隷をあなたのふところに与えたのはわたしなのに、彼女は自分が身ごもったのを知ると、わたしを軽んじるようになりました。主がわたしとあなたとの間を裁かれますように。」

6節                アブラムはサライに答えた。「あなたの女奴隷はあなたのものだ。好きなようにするがいい。」サライは彼女につらく当たったので、彼女はサライのもとから逃げた。

明治天皇の正式な奥様、昭憲皇后は、教養のあるとても上品なお方でした。外交面でご活躍があったほか、日本赤十字の名誉総裁にもなりました。しかし、一生、子供に恵まれなかったので、現在の天皇陛下と血がつながっていません。天皇家を絶やさないため、明治天皇に5人の側室が与えられ、全部で15人の子供が生まれました。しかし、当時は赤ちゃんが成長して大きくなる前に死ぬ確率がとても高く、15人の内10人は2歳までに、お亡くなりになりました。生き残った5人の内、とても病弱だった、ただ一人の男の子が昭憲皇后の養子になり、大正天皇になって天皇家を継ぎました。

東奥義塾が創立して間もない頃の日本もこのような状況だったので、アブラムが生きていた青銅器時代の4,000年も前に同じようなことがあっても不思議ではないでしょう。奴隷制度も、アメリカ大陸に黒人奴隷が連れて行かれたよりも、はるか昔から世界各地にあり、財産が多い人なら、奴隷がいない方が珍しいと言える時代が長く続きました。裕福な奥様には身の回りの世話をする女奴隷がいて、奥様に子供が生まれない場合は、奴隷が代わりに産むという習慣もありました。その場合、生まれて来る子供は産んだお母さんではなく、主人である奥様の子供になるので、原始的な代理母制度だったとも言えます。

アブラムは神様を信じたので「義」、つまり神様に喜ばれる正しい人と認められましたが、アブラムの心はその前に、大きく揺れることがありました。カナンの地に来てまもなく飢饉が起きましたが、その場所に導いてくださった神様が雨を降らせてくださるまでは待てず、エジプトに避難しました。そこで、エジプトの王様から動物の群れだけではなく、男女の奴隷も与えられました。その内の一人はハガルという女性で、アブラムの奥様のサライに仕えることになりました。

アブラムに当時の習慣が分からなかったはずはありません。しかし、とても美しい奥様だったサライに一筋で、行いが正しい人だったので、女奴隷に手を出そうとは思いませんでした。神様から星の数ほどの子孫が与えられると告げられた時、サライとの間に子供が生まれるものと信じて疑いませんでした。アブラムの一途な心を揺さぶったのは意外なことに、奥様のサライの言葉でした。「主はわたしに子供を授けてくださいません。どうぞ、わたしの女奴隷のところに入ってください。わたしは彼女によって、子供を与えられるかもしれません。」

アブラムの気分は決して爽やかではありませんでした。しかし、子供ができなくて辛いのは自分だけではないことに気付き、サライの言う通りにしました。最初はうまく行ったかに見えましたが、結果的にアブラムの家庭は大変なことになりました。理想的な女奴隷なら、身ごもった子供が自分の物にならないのは覚悟済みだったはずですが、ハガルは妊娠してサライに勝ったという気持ちになりました。

信仰の人、アブラムの心が大きく揺れたのはこれで二回目でした。自然体のまま、素直に生きていれば良いのに、悪知恵を使って先回りしようとする誘惑は誰にもやってきます。アクションを起こさないと損をする気になり、自分を良く見せようとしたり、周囲にいる人について悪い噂を立てたりする衝動にかられます。アブラム一家のこの有様を見て神様はどう思ったことでしょう。次回はその話になります。

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