2022年8月31日 礼拝説教 「私はあなたたちと契約を立てる」

 2022831日 礼拝説教

「私はあなたたちと契約を立てる」

創世記81節、1416節、1819

1節               神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。・・・

14節           第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。

15節           神はノアに仰せになった。

16節           「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。・・・

18節           そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。

19節           獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。

創世記91節、9節、11節、13節、16

1節               神はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。・・・

9節               「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。・・・

11節           ・・・二度と洪水によって肉なるものがことごとく滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」・・・

13節           ・・・わたしは雲の中にわたしの虹を置く。・・・

16節           雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心を留める。」

キリスト教は「愛の宗教だ」という話を聞いたことがあると思います。これは決して間違いではありません。聖書の後半まで読み進むと、神様の愛についてたくさんのことが書いてあります。しかし、聖書を1ページ目から読むと、人間の悪い行いに我慢できない、厳しい正義の神様に出会います。アダムとエバをエデンの園から追い出し、人間を造ったことを後悔します。洪水を起こして人類を滅ぼします。

造った物の中で最高の作品である人間に、神様は理性と、善悪を見分ける知恵を与えました。動物的な本能の他に、自分独自の生き方を選ぶ自由を与えました。天地創造を終わらせ、最後に造った人間が何をするだろうと、興味津々に眺めていました。しかし、このような生き物を造ることに大きなリスクがありました。人間はその優れた能力を活かして一体何をするでしょうか。どんな病気をも治す薬を作るでしょうか。それとも、全人類を滅ぼす力のある爆弾を造るでしょうか。それは神様を初めとして、誰にも分からないことでした。

ノアの洪水で終了する、人類の第一幕は悲劇に終わりました。自由を与えた人間はそれを悪用するばかりで、何一つ良いことをしませんでした。しかし、聖書が描く人類の歴史はノアの洪水で終わりませんでした。神様は諦めることなく「人間」という一大プロジェクトを続けました。箱舟の中に、絶滅の一歩手前まで追い込まれた人類は辛うじて生き残っていました。水に覆われた地面を見渡した神様は深い悲しみに襲われ、ノアの家族に心を留めました。一大決心をした神様はわずかに生き残った人間に固い約束をしました。「もう、二度とこのような事をしない。雨雲が現れた時に見える虹はその証となる。」

契約を結ぶと二人以上の人が約束するのが一般的ですが、ここで神様は一方的に、「これは私が立てた契約だ」と宣言しました。ここで生き残った人間にごく少数のルールを与え、その代表的な物は、人殺しを許さないという戒めでした。「人の血を流す者は人によって自分の血を流される。人は神にかたどって造られたからだ。」弟を殺したカインの罪から始まった、洪水前の悲劇を繰り返す訳には行きませんでした。これは「殺人の報いは死刑だ」という掟の始まりでした。

洪水が終わってから世界は平和になったでしょうか。そうは行きませんでした。しかし、神様は二度と滅ぼさないという約束を守りながら、人類との付き合いを続けました。聖書は愛と正義の両立を求め、自由で正しい社会を作らせようとする、神様の試行錯誤の物語です。何度も新しい契約を立てますが、挙句の果て、自ら人間になって人にお手本を示すことにします。これは新約聖書のメインテーマですが、人となった神がどうなったかは、礼拝堂の真ん中にある十字架が物語っています。人に嫌われ、十字架に付けられ、殺されました。しかし、殺される前に口にしたのは「彼らをお赦しくだい。」という言葉でした。

キリスト教は愛の宗教だけではありません。時には恐ろしい、正義の宗教でもあります。しかし、聖書を最後まで読むと、もっと大事な真実に出会います。キリスト教は赦しの宗教です。自分も赦されますが、恨みを抱いている相手に対する赦しをも求められます。箱舟に入って救われるのは、この赦され、赦し合う喜びと解放感を味わった人たちです。箱舟から出た人類の歩みは振り出しに戻りますが、神様のご計画は新しい方向に展開し、この物語は続きます。

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