2022年7月11日 礼拝説教 「レメクは七十七倍」
2022年7月11日 礼拝説教
「レメクは七十七倍」
創世記4章14~24節、6章5、6節
14節
カインは主に言った。「・・・わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」
15節
主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。・・・
17節
カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。・・・
18節 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19節
レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラといった。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
23節
さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し打ち傷の報いに若者を殺す。
24節
カインのための復讐が七倍ならレメクのためには七十七倍。」
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6章
5節
主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、
近所の犬に噛まれたので、飼い主の顔をひっぱたいた。仕返しに石を投げられ、窓ガラスが割れたので、相手の車のタイヤに穴を開けた。それに怒った相手は金属バットを振りかざしてやって来たので、先祖伝来の刀を持ち出して襲いかかった。現実離れしたバカバカしい話ですが、際限なく仕返しが続くと、世の中は地獄のような場所になります。神様はアベルを殺したカインへの仕返しを禁止し、カインを殺す人に七倍の復讐を与えると宣言しました。これは人ではなく、神様ご自身が与えると言った罰でした。
さすらい人になったカインにも子供が生まれましたが、五代目の子孫として生まれたレメクは恐ろしい人でした。先祖、カインに与えられた約束を身勝手に解釈し、歯向かう者を七十七倍返しにしてやると言い、ケガさせた若者を殺したことを自慢しました。後の時代になって「目には目を、歯には歯を」という掟ができましたが、レメクの言葉を言い換えると次のようになります。「俺の足を踏んだらお前の顔を殴ってやる。俺の顔を殴ったら殺してやる。」暴力の応酬が続き、世代ごとに悪くなる一方でした。神様はついに「地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。」と書いてあります。
先週、元の総理大臣が選挙演説中に殺されたというニュースに大きなショックを受けたと思いますが、現代の日本社会では、自分の手で仕返しをするのは稀で、何かの被害に遭うと学校や、警察や、裁判所に任せるのが一般的です。しかし、対照的に、国と国の間で起きる争いを見ると、レメクの七十七倍返しの例は後を絶ちません。
皆様が生まれる前に起きた事件ですが、9・11の同時多発テロの日、被害を受けたアメリカで死んだのは3千人足らずでした。しかし、その仕返しになったアフガニスタン戦争で死んだ現地の人の数は17万人以上で、その内の4万人を超える数は一般市民でした。同時に行われたイラク戦争では、開戦の理由とされた大量破壊兵器が一つも見つかることなく、20万人前後の一般市民が殺されました。全体の死亡者数は50万人以上と言われていますが、正確な集計が不可能と言われるほど、たくさんのイラク人が死にました。
太平洋戦争の引き金になった真珠湾攻撃で死んだのは2千4百人たらずのアメリカ兵と68人の一般市民でした。しかし、その仕返しに、一般市民を狙った空襲で焼け野原になった日本の都市の数は67に上り、2つの都市に原子爆弾が落とされました。沖縄県民の4人に1人が殺され、日本の一般市民だけで、50万人から80万人が死亡したと言われています。レメクの七十七倍返しどころではない話ですが、この国と軍事同盟を強めることがあっても、一緒に戦争することがないことを切に祈ります。
人から受けた行為に仕返しをしても良いかは聖書の大きなテーマの一つですが、ページをめくると、聖書の教えが変化して行くのがわかります。後半まで読み進むと次の言葉に出会います。「すべての人と平和に暮らしなさい。自分で復讐せず、神の怒りに任せなさい。『復讐はわたしのすること、わたしが報復する』と主は言われる。あなたの敵が飢えていたら食べさせ、渇いていたら飲ませよ。悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい。」
悪口を言われ、嫌なことをされると、仕返しをしたくなるのは人間としてごく当たり前の事ですが、聖書は次のように教えています。「仕返しを神様に任せなさい。相手にはこれまで通りに、誠意を尽くしなさい。それを見て反省しなければ、いずれは自滅します。神様からの仕返しが来るのを待ちなさい。善をもって悪に勝ちなさい。」
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