2021年10月11日 礼拝説教 「天命を知らされた人の喜び」

 20211011日 礼拝説教

天命を知らされた人の喜び

ルカによる福音書244453

44節           イエスは言われた。「わたしについてモーセの律法と預言者の書と詩編に書いてある事柄は、必ずすべて実現する。これこそ、まだあなたがたと一緒にいたころ、言っておいたことである。」

45節           そしてイエスは、聖書を悟らせるために彼らの心の目を開いて、

46節           言われた。「次のように書いてある。『メシアは苦しみを受け、三日目に死者の中から復活する。

47節           また、罪の赦しを得させる悔い改めが、その名によってあらゆる国の人々に宣べ伝えられる』と。エルサレムから始めて、

48節           あなたがたはこれらのことの証人となる。

49節           わたしは、父が約束されたものをあなたがたに送る。高い所からの力に覆われるまでは、都にとどまっていなさい。

50節           イエスは、そこから彼らをベタニアの辺りまで連れて行き、手を上げて祝福された。

51節           そして、祝福しながら彼らを離れ、天に上げられた。

52節           彼らはイエスを伏し拝んだ後、大喜びでエルサレムに帰り、

53節           絶えず神殿の境内にいて、神をほめたたえていた。

「待遇は立派です。物足りないのは仕事の内容です。」19世紀の末期に中国伝道に備え、中国語をマスターしたロバート・ジャフレーというカナダ人がいました。香港に支店を開こうとしていた石油大手のスタンダード・オイル社はジャフレーの流暢な中国語に目をつけ、リクルートに乗り出しました。断られると給料のオファーを倍にしました。金額をいくら釣り上げても首を縦に振らないので、ついに尋ねました。「どうしましたか。これほどの好待遇でも、まだ不満があると言うのですか。」そこでジャフレーが言ったのは最初に言った言葉です。「待遇は立派です。物足りないのは仕事の内容です。」信仰心に燃えていたジャフレーが苦労して覚えた中国語は、中国で伝道するために習得したものでした。中国人に石油を売るためにそれを使うなんて、もってのほかでした。

ルカによる福音書は今日の箇所でおしまいです。弟子たちが復活したイエス様に会えたのは束の間で、もういません。イエス様が死んだのではなく、天に上げられたとはいうものの、すぐに実現すると期待していた「神の国」はまたも先送りになりました。しかし、ここには、イエス様が死んだ時に見られた、あの悲しみや絶望はみじんも感じられません。「イエスを伏し拝んだ後、大喜びでエルサレムに帰った。」と書いてあります。弟子たちに起きた心境の変化の原因は何だったでしょうか。

まずは、十字架に付けられるまで、イエス様の弟子として体験したことは無意味どころか、想像していた以上に大事なことだったと気づかされました。次に、国家の繁栄という、範囲の狭いローカルなビジョンに代わって、「あらゆる国の人に伝えられる」、全世界を視野に入れたグローバルなビジョンが与えられました。それを実現させる立役者となるのは自分たちだと悟り、エルサレムを離れないでじっと待っていれば、まもなく天からのパワーに包まれ、行動を開始できると知りました。

組織も、お金も、学歴も、地位もない彼らに特別な力が授けられ、ついて行くことしか知らなかった彼らは、人類の先に立ってリードする人間に変身しました。ナザレのイエスの一人分しかない、一体の体の制約を受けていた力が、弟子となる一人ひとりに分け与えられ、イエス様の代理人として全員が一斉に活動を開始しました。

復活したイエス様が弟子たちを最後に連れて行ったのは帝国の都のローマでもなく、エルサレムの神殿でもなく、ご自分のゆかりの地だったベタニアの村でした。ガリラヤ地方から来た巡礼者を泊める場所だった他に、差別されていた病人や貧しい人が住んでいる村でした。貧しい人、お腹をすかしている人、泣いている人、仲間はずれにされた人が皆、幸せになると教えたイエス様が、深く心に留めていた村でした。弟子たちとの最後の別れに、この場所を選んだイエス様の思いは容易に推測できると思います。

「待遇は物足りない。しかし、与えられた使命に、これ以上のものはない。」弟子たちがその後に発信したメッセージは国境を越えて広がり、世界の歴史はもちろんのこと、近代の社会構造まで変えました。これからの進路を決めるにあたって、待遇の良さや、社会的身分を重視する人もいると思います。その一方、人の幸せを思い、人類の苦しみを和らげる務めに身を投じる人もいると思います。そうしようと決心した人に今日のイエス様の言葉が向けられています。「あなたがたはあらゆる国で、これらのことの証人となる。高い所からの力に覆われるまでは、都にとどまっていなさい。」

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