2021年2月8日 礼拝説教 「物でもなければ人でもない」

 

202128日 礼拝説教

「物でもなければ人でもない」

ルカによる福音書21511

5節              ある人たちが、神殿が見事な石と奉納物で飾られていることを話していると、イエスは言われた。

6節              「あなたがたはこれらの物に見とれているが、一つの石も崩されずに他の石の上に残ることのない日が来る。」

7節              そこで、彼らはイエスに尋ねた。「先生、では、そのことはいつ起こるのですか。また、そのことが起こるときには、どんな徴があるのですか。」

8節              イエスは言われた。「惑わされないように気をつけなさい。わたしの名を名乗る者が大勢現れ、『わたしがそれだ』とか、『時が近づいた』とか言うが、ついて行ってはならない。

9節              戦争とか暴動のことを聞いても、おびえてはならない。こういうことがまず起こるに決まっているが、世の終わりはすぐには来ないからである。」 

10節          そして更に、言われた。「民は民に、国は国に敵対して立ち上がる。

11節          そして、大きな地震があり、方々に飢饉や疫病が起こり、恐ろしい現象や著しい徴が天に現れる。

工事が始まって136年にもなるのに完成していない大聖堂として有名なのは、バルセロナにあるサグラダファミィリアです。2026年に完成する目処がたったと思いきや、新型コロナウイルスの流行で工事がまたも中断し、現在も止まっています。新約聖書時代のエルサレム神殿も同じく、長期にわたって工事が進められた建物で、巡礼者としてエルサレムに上る度にイエス様の弟子たちはその美しくなって行く姿に見とれていたことでしょう。外壁は金の板と純白に近い大理石でできていて、太陽の光を反射する姿を遠くから見ると、雪が積もったという錯覚を起こす効果がありました。 

厳かな神殿は人に不思議な力を及ぼします。神聖な物に対する恐れと憧れを引き起こしますが、古代から、権力者は民衆の心を支配する道具としてうまく利用してきました。エルサレムの神殿もいわくつきの建物でした。そもそも、ユダヤ人の神殿は移動式の天幕のようなシンプルな物でした。国民に重い税金を課して豪華絢爛な神殿を断てた旧約聖書時代のソロモンも、イエス様が生まれた頃に第二神殿の改築を進めたヘロデ大王も、神を敬う思いの他に、間違いなく自分の権力の偉大さを誇示する動機がありました。

しかし、多くのユダヤ人にとって神殿について否定的なことを言うのは死に値する罪であり、特にエルサレムにいる時は口を慎まなければなりませんでした。もちろん、そのようなことを気にせずに発言するのはガリラヤの預言者、ナザレのイエスでした。神殿の見事は石細工や、名の通った有力者の名前が刻まれた奉納物に感心している人たちの耳に聞こえるように、イエス様は血を凍らせるような発言をしました。「あなたがたはこれらの物に見とれているが、一つの石も崩されずに他の石の上に残ることのない日が来る。」

ユダヤ人のそれまでの歴史の中で最も悲しい出来事は紀元前586年に起きたバビロン軍による第一神殿の破壊でした。やっとの思いで建て直し、世界に誇れる姿を取り戻した第二神殿も同じ目に合うなんて、思ってもいけないことでした。しかし、皮肉なことに、それから40年後、正にその通りになりました。神殿が全焼し、火の熱で溶けだした金は石垣にしみ込み、その金をはぎ取るためにローマの兵士は、神殿の石を一つ残らず解体しました。この時に残されたのは、今もエルサレムにあり、ユダヤ教徒の心の支えとなる「嘆きの壁」と呼ばれる僅かな一部分でした。

人の手で作られた物はすべてなくなります。鉄とコンクリートでできた近代建築は特にそうだと言えるかもしれません。この校舎も礼拝堂も例外ではなく、会社や国家さえも、人が作った組織も皆そうです。絶対に変わらないように見えても、永遠に存続するものではありません。イエス様は神殿に目を奪われた人たちに対してそのことを強調し、命に限りあるものに過ぎない「人」にも気を付けるように警告しました。「『わたしがそれだ』という人に惑わされないように気をつけなさい。」と言いました。

聖書は、目に見える形が滅ばされても、いつまでも残る物があると教えています。イエス様は、死んでもなくならない命があると教えました。今日は、二、三日しか残らない生涯の終息を迎えるイエス様が語った言葉を読みました。「戦争とか暴動のことを聞いても、おびえてはならない・・・世の終わりはすぐには来ないからである。」世の中がいくら混乱しているように見えても、神様の私たちに対する永遠の計画は変わりません。気落ちすることなく、勇気を出して進みましょう。

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