2020年11月30日 礼拝説教 「ナザレのイエスのクーデター」
2020年11月30日 礼拝説教
「ナザレのイエスのクーデター」
ルカによる福音書19章41~48節
41節
エルサレムに近づき、都が見えたとき、イエスはその都のために泣いて、
42節
言われた。「もしこの日に、お前も平和への道をわきまえていたなら……。しかし今は、それがお前には見えない。
43節
やがて時が来て、敵が周りに堡塁を築き、お前を取り巻いて四方から攻め寄せ、
44節
お前とそこにいるお前の子らを地にたたきつけ、お前の中の石を残らず崩してしまうだろう。それは、神の訪れてくださる時をわきまえなかったからである。」
45節
それから、イエスは神殿の境内に入り、そこで商売をしていた人々を追い出し始めて、
46節
彼らに言われた。「こう書いてある。『わたしの家は、祈りの家でなければならない。』ところが、あなたたちはそれを強盗の巣にした。」
47節
毎日、イエスは境内で教えておられた。祭司長、律法学者、民の指導者たちは、イエスを殺そうと謀ったが、
48節 どうすることもできなかった。民衆が皆、夢中になってイエスの話に聞き入っていたからである。
イエス様が危険な革命家の顔をのぞかせたとするなら、一生の内、この一日だけでした。しかし、「王に、祝福があるように」と叫んではしゃいでいた弟子たちは武装してはいませんでした。みすぼらしい恰好をした預言者がロバに乗ってエルサレムに入場したぐらいで、ローマの駐留軍が反応するはずがありませんでした。ロバに乗っていたイエス様ご自身も、王様になれるとは思っていませんでした。数日の間、群衆が自分の支持に回って盛り上がっても、いずれは当局につかまるのは百も承知でした。
エルサレムが見えてきたら、ロバに乗っている王様、ナザレのイエスは泣きました。自分こそ、イスラエルに癒しと快復をもたらす人物だと知っていながら、同胞が武力闘争を選び、自分たちの上に滅びを招く事を知っていました。「もしこの日に、お前も平和への道をわきまえていたなら……。しかし今は、それがお前には見えない。」紀元70年に起きたエルサレムの破壊、ユダヤ人の虐殺、そして国家の滅亡はすべて、エルサレムを眺めるイエス様の目に映っていました。
王様としてエルサレムに入ったイエス様の最初の標的は、ローマ軍でも、ユダヤ人が管理する警備隊でもなく、神殿礼拝に絡む利権でした。カルト宗教のことが話題になっていた頃、メディアに出たある人が言った言葉を記憶しています。「お金を取るのは悪い宗教、お金の取らないのが良い宗教と思えば、ほぼ間違いありません。」この言葉を判断基準にするなら、当時のエルサレムの神殿を管理する人たちは悪い宗教を営んでいました。
一般社会で流通していたお金は、ローマ皇帝の肖像が刻まれたローマの貨幣でした。しかし、神殿で献金をしようとすると、このローマのお金を受け取ってもらえませんでした。皇帝の肖像が偶像に当たるという理由から、このお金をまず、ユダヤ人固有の貨幣に両替しないと、献金できませんでした。ユダヤ人の礼拝の大事な一部分は、生きた動物をいけにえとして神様にささげることでした。傷も欠陥もない動物でないといけないという決まりがあったので、ささげる前に検査がありました。
ここで、大変な茶番が演じられていました。ローマのお金の両替手数料は法外なもので、いくら立派な動物を持って来ても、検査を通るはずがなく、とんでもない値段で販売していた神殿公認の商人から、いけにえ用の動物を買わされる有様になっていました。この利益は神殿を管理するエリートの祭司たちの懐に入り、一般庶民だけではなく、地方に住む平の祭司たちも生活に困っていました。
初代のクリスチャンたちは、現代のアメリカの多くのクリスチャンたちと違って、この世的な政治に関心を示しませんでした。純粋な信仰者であれば、今になってもそれは変わりません。大事なのは人の神様との関係だったので、イエス様が怒りの矛先を向けたのは、神殿礼拝を利用して私腹を肥やす偽宗教家たちでした。『わたしの家は、祈りの家でなければならない。』ところが、あなたたちはそれを強盗の巣にした。」と言い放ったイエス様の、唯一のクーデターは、後に「宮清め」と言われるようになったこの事件でした。
神殿の境内から商人たちを追い出すのに成功できたのは巡礼者たちの圧倒的な支持があったからですが、ユダヤ人の指導者たちがこの行為を許すはずはありませんでした。彼らの決意は固まりました。ナザレのイエスを殺すしかない。歴史が進むに従って、このパターンは何度も繰り返されてきました。その都度、どちらに付くかを巡って、人の心は試されます。利権が絡むと人の心に殺意が芽生えるので、黙っていた方が無難ですが、それでは何も変わりません。このような状況に出会ったら、皆様はどのような行動を取るでしょうか。
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