2020年10月12日 礼拝説教 「目が見えるようになりたい」
2020年10月12日 礼拝説教
「目が見えるようになりたい」
ルカによる福音書18章35~43節
35節
イエスがエリコに近づかれたとき、ある盲人が道端に座って物乞いをしていた。
36節
群衆が通って行くのを耳にして、「これは、いったい何事ですか」と尋ねた。
37節
「ナザレのイエスのお通りだ」と知らせると、
38節
彼は、「ダビデの子イエスよ、わたしを憐れんでください」と叫んだ。
39節
先に行く人々が叱りつけて黙らせようとしたが、ますます、「ダビデの子よ、わたしを憐れんでください」と叫び続けた。
40節
イエスは立ち止まって、盲人をそばに連れて来るように命じられた。彼が近づくと、イエスはお尋ねになった。
41節
「何をしてほしいのか。」盲人は、「主よ、目が見えるようになりたいのです」と言った。
42節
そこで、イエスは言われた。「見えるようになれ。あなたの信仰があなたを救った。」
43節
盲人はたちまち見えるようになり、神をほめたたえながら、イエスに従った。これを見た民衆は、こぞって神を賛美した。
春分の日の次に来る満月から始まる、ユダヤ教の最大の祭、過ぎ越しの祭が間近に迫っていました。方々から集まる巡礼者たちの、エルサレムへの集結が始まっていました。イエス様とその一行は彼らに交じり、エリコの町に入りました。巡礼の順路にあるこの町から、ゴールとなるエルサレムまでの距離は25キロくらいでした。弘前を目指して北上する人が県境を越えて碇ヶ関に入ったと想像すればイメージがつかめると思います。
国民感情の強いユダヤ人が一か所に集まり、民族意識が高まる時だったので、当局者たちはトラブルが起きないかと神経を尖らせていました。この年、特にマークされていたのは、ガリラヤ地方で人気を集めていた預言者、ナザレのイエスでした。本人にはその気がなさそうでしたが、周囲にいる人たちの間で指導者として担ぎ、謀反を起こそうする気配が感じられ、当局のスパイたちに、常に見張られていました。
エリコの町の入り口付近に一人の盲人が座って物乞いをしていました。哀れな人という見方もできるでしょうが、中東の社会では今でも、乞食には立派な役目があります。人は皆、死後の世界に備えて徳を積む必要がありましたが、このような乞食の存在は徳を積む良い機会を提供してくれました。施しをもらう乞食は生活費を稼ぎ、施しをする人は徳を積むというWin-Winの関係が成立するので、この人の存在は社会的に認知されていました。
過ぎ越しの祭に向かう大勢の人たちが通過する季節だったので、乞食にとっては書き入れ時でした。しかし、この目の不自由な方はその日、通常では考えられないほどの賑わいに気付きました。「何事か」と聞いたら、「ナザレのイエスのお通りだ」と告げられました。盲人の反応は尋常ならぬものでした。物乞いをしていたので、声を上げるのは当たり前とは言うものの、音量も叫ぶ回数も常識の範囲を超え、話す言葉の内容もイエス様の周囲にいる人たちを困らせました。「ダビデの子、イエスよ、わたしを憐れんでください。」
信仰深いユダヤ人は皆、旧約聖書の預言通りに、ダビデ王の子孫が政権に就くことを切に祈り求めていました。しかし、このような時に、この場所で「ダビデの子」と叫ぶのは、革命の狼煙を上げるのに等しい行為で、心に思っても口に出してはいけないことでした。人混みの中でイエス様の前を進み、道を開けようとしていた弟子たちが叱りつけ、黙らせようとするのは無理もないことでした。 しかし、ナザレのイエスの噂を聞いていたこの盲人が抱いた夢は、ユダヤ人が抱くイザヤ書35章にある、究極的のものでした。「心おののく人々に言え。雄々しくあれ、恐れるな。見よ、あなたたちの神を。そのとき、見えない人の目が開き、聞こえない人の耳が開く。荒れ野に水が湧きいで、荒地に川が流れる。」
黙らせようとする人たちの声を制し、盲人をそばに連れて来るように命じたのはイエス様でした。その様子を見て言いました。「見えるようになれ。あなたの信仰があなたを救った。」現実に甘んじることなく、より良い世界の到来を固く信じ、空気を読もうとしないで大騒ぎするこの盲人はイエス様のお気に入りでした。諦めが肝心だと思っておとなしくしていれば周囲の人たちから、社会的身分をよく理解している、まともな人間だと思われたかもしれませんが、ナザレのイエスに接近する、一回きりのチャンスを無駄にしようとはしませんでした。
今、ここにいる私たちにどのようなチャンスが巡っているのでしょうか。イエス様から「あなたの信仰があなたを救った。」と言われるためにどのように行動すべきでしょうか。通り過ぎて行く出会いを無駄にする青春を過ごすことのないように、限られた機会を十分に生かす学校生活を送るようにしましょう。
Comments
Post a Comment