2019年5月27日 礼拝説教 「恐れるに足りない人たち」


2019527日礼拝説教
「恐れるに足りない人たち」

ルカによる福音書121節 ~ 7節 


1節                  とかくするうちに、数えきれないほどの群衆が集まって来て、足を踏み合うほどになった。イエスは、まず弟子たちに話し始められた。「ファリサイ派の人々のパン種に注意しなさい。それは偽善である。
2節                  覆われているもので現されないものはなく、隠されているもので知られずに済むものはない。
3節                  だから、あなたがたが暗闇で言ったことはみな、明るみで聞かれ、奥の間で耳にささやいたことは、屋根の上で言い広められる。」
4節                  「友人であるあなたがたに言っておく。体を殺しても、その後、それ以上何もできない者どもを恐れてはならない。
5節                  だれを恐れるべきか、教えよう。それは、殺した後で、地獄に投げ込む権威を持っている方だ。そうだ。言っておくが、この方を恐れなさい。
6節                  五羽の雀が二アサリオンで売られているではないか。だが、その一羽さえ、神がお忘れになるようなことはない。
7節                  それどころか、あなたがたの髪の毛までも一本残らず数えられている。恐れるな。あなたがたは、たくさんの雀よりもはるかにまさっている。」


イエス様の弟子たちは激しい不安に襲われていました。困ったことに、師匠のイエス様がファリサイ派に加え、一般市民を社会的に抹消する権限がある律法の専門家まで敵に回してしまいました。現代風に言うと、共産党の役員を痛烈に批判した中国の一般市民の立場をイメージすれば良いと思いますが、絶対に歯向かってはいけない人たちを怒らせてしまいました。押し寄せる群衆の数は増える一方でしたが、弟子たちは不吉なものを感じました。ここまで権力者の敵意を招くと、自分たちの逮捕は時間の問題のように思えてきました。

しかし、弟子たちの不安そうな表情に気が付いたイエス様に、トーンを下げる気配は感じられませんでした。敵は恐れるべきものではない。最悪の事態になっても、彼らにできるのは、せいぜい自分たちを殺すことであって、それ以上のことは何もできない。これはブラックユーモアではなく、イエス様が語る言葉は真剣そのものでした。人を殺したからと言って、その人が語る真実を殺すことはできない。恐れるべきことはむしろ、真実を曲げ、その罰として死んだ後に神様のさばきを受けることだと言いました。

このような心境になれる人ほど強い人間はいません。いくらひ弱に見えても、横暴な権力者も、ブラック企業の雇い主も、DVで脅す配偶者も、いじめっ子のボスも、このような人には勝てません。相手にできるのは殴ること、陰口をたたいて仲間はずれにすること、退学処分にすること、懲戒免職にすること、逮捕すること、最悪でも殺す程度のことで、真実まで殺して、人を地獄に突き落とすことはできません。意味もなく、相手を挑発するようには勧めませんでしたが、正義と真実を守る意思のある人にイエス様は次のように言いました。「それ以上何もできない者どもを恐れてはならない。」

 イエス様は恐れてはならない理由を二つあげました。まず、敵の行いに「パン種」、つまりパンを膨らますイースト菌のような物が入っていると言いました。パンを作る過程で小麦粉にイースト菌を混ぜます。しばらくするとパンの生地は膨らみ、体積が数倍に増えます。卑怯な手を使って有利な立場を維持する人たちの偽善はイースト菌と同じで、最初は姿を隠していても、時間とともに膨らみ、必ず人の目に付くようになります。敵の矛盾を暴くのがいくら困難に見えても、気落ちする必要はありません。「暗闇で言ったことはみな明るみで聞かれ、奥の間で耳にささやいたことは、屋根の上で言い広められる。」

 イエス様があげたもう一つの理由は、一羽の雀さえ忘れることのない、神様がいるということでした。生き物の命にランクを付けることに疑問を感じる人もいるかもしれませんが、イエス様は言いました。「恐れるな。あなたがたは、たくさんの雀よりもはるかにまさっている。」まっすぐに生きても損するばかりでバカバカしいと思った時にこそ、心に留めてください。必ず誰かが見ています。損を覚悟してまっすぐに生きるあなたを、直接応援する勇気がなくても、一つの誠意ある行動、一つの嘘のない発言は、簡単に脳裏から消えません。

 イエス様を取り巻く包囲網は着々と狭まっていました。この方の弟子であることは徐々に、危険性を伴う、覚悟のいることになりつつありました。今までとは違う、緊迫した雰囲気の中で、イエス様は弟子たちにカツを入れました。「体を殺しても、その後、それ以上何もできない者どもを恐れてはならない。恐れるな。あなたがたは、たくさんの雀よりもはるかにまさっている。」今日の私たちに、同じような勇気が与えられるように祈りましょう。

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