2017年11月13日 礼拝説教 「世間並では物足りない」
2017年11月13日礼拝説教
「世間並では物足りない」
ルカによる福音書6章32節~36節
33節
また、自分によくしてくれる人に善いことをしたところで、どんな恵みがあろうか。罪人でも同じことをしている。
34節
返してもらうことを当てにして貸したところで、どんな恵みがあろうか。罪人さえ、同じものを返してもらおうとして、罪人に貸すのである。
35節
しかし、あなたがたは敵を愛しなさい。人に善いことをし、何も当てにしないで貸しなさい。そうすれば、たくさんの報いがあり、いと高き方の子となる。いと高き方は、恩を知らない者にも悪人にも、情け深いからである。
36節
あなたがたの父が憐れみ深いように、あなたがたも憐れみ深い者となりなさい。」
愛してくれる人を愛し、良くしてくれる人に良いことをし、返してくれる人に貸す。世間並みのことをして人様に迷惑をかけない。一般論としてこれさえできれば、人間として合格点をもらえます。国同士の付き合いを見ても同じです。仲良くしてくれる国と仲良くし、有利な条件で商売してくれる国と貿易協定を結び、気が合う国と軍事同盟を結び、歯向かう国に爆弾を落とす。これさえできれば、国際社会では立派な先進国として認めらます。
イエス様はこのことをよく知っていました。「目には目。歯には歯。」を徹底的に実行する中東社会に生きていました。しかし、この考えがいつまでたっても悲劇の連鎖を生むことをも知っていました。「人並を続けるだけでは人類に進歩がない。人の務めはもっと高い水準を狙うことにある。神様は恩知らずな人にも悪人にも情け深い。この情け深い神様の子供になりなさい。悲劇の連鎖を断ち切る方法はこれしかない。」イエス様はこのようにして、当時の人たちに訴え、現代の私たちにも訴えています。
明治から昭和の初期にかけて日本は何とかして西洋列強に追い付き、徹底した近代化と富国強兵政策の実行に成功しました。同時に、近代化の進んだ国が、遅れている国を支配する権利があるという西洋列強の勝手な理屈に侵され、近隣諸国への侵略を始めました。それを邪魔しようとするアメリカに一撃を加えたら、沖縄戦、東京空襲、広島、長崎に象徴される百倍返しに合いました。
その後のアメリカは軍事的に、キリスト教国と称しながら新約聖書ではなく、旧約聖書的とも言える原理に動かされて行動し、「つま先を踏まれたら顔を殴ってやる。顔を殴られたら殺してやる。」という表現にふさわしい行動をとり続けてきました。忘れてはならないのは、日本はこの国と軍事同盟を結んでいることであり、日本各地に軍事基地を構えているのもこの国です。
戦争が終わり、今からちょうど71年前に新しい憲法が公布されました。新約聖書を読み、人類を次の段階に進歩させるために必要なのは何かと知りながら、自国の憲法にそれ書く勇気のない戦勝国は、皮肉なことに敗戦国の憲法にその原理を書き込みました。
日本国民はそれを嫌がるどころか、もはや戦争をしない国になれることを喜び、71年間もその一句も変えることなく頑なに守り、大部分の人たちは日本人固有の信念として、これを心に刻みました。結果として、戦争という国家の暴力行為によって他国民の命を一人も奪うことなく、自国民の命を一人も失うことなく、72年以上もの年月が過ぎるという奇跡的な出来事が起こりました。
現在、必死になって日本を世間並の国に逆戻りさせようと画策している人たちがいます。国際会議で、歯向かう国に爆弾を落とす相談があると席を外さなければならないのが悔しいと思う人たち。「みんな鉄砲を持っているから僕も欲しい」と胸騒ぎしてうずうずしている人たち。正直に真正面からやると気づかれて阻止されるので、気づかれないように巧妙に動いています。
「自分によくしてくれる人に善いことをしたところで、どんな恵みがあろうか。罪人でも同じことをしている。あなたがたは敵を愛しなさい。そうすれば、たくさんの報いがあり、いと高き方の子となる。」
しばらくの間、中東で頭角を現したイスラミック・ステートは壊滅状態に追い込まれました。しかし、テレビに映る、奪還されたモスルやラッカの姿を見て、素直に喜べる人はいなかったと思います。
「いと高き方は、恩を知らない者にも悪人にも、情け深いからである。あなたがたの父が憐れみ深いように、あなたがたも憐れみ深い者となりなさい。」
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